第29回国際七宝ジュエリーコンテスト(2016)入賞作品

 The 29th International Cloisonne Jewelry Contest- 2016 - 

     2016年4月8日~14日 東京・上野の森美術館にて開催

 

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     最優秀賞/Award for the most Excellence

    「Flower-Ⅰ」 Jeong Keun Park(Paran) (Korea)



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     優秀賞/Award for Excellence 

   「Window PartⅠ」 Chi-Yun Hsieh (Taiwan) 

 

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     優秀賞/Award for Excellence

      「春の訪れ」 山中さゆ子


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    上野の森美術館賞/Ueno Royal Museum Award

       「びっくりドクロ」 菊地 龍

 

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   清水三年坂美術館賞/Kiyomizu Sannenzaka Museum Award

     「パピオン」 内本 節子

 

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   清水三年坂美術館賞/Kiyomizu Sannenzaka Museum Award

        「Woman in White」
      Rūta Jurkūnaitė-Bruožienė (Lithuania)

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   銀粘土賞/Silver Clay Award

      「サンライズ」 室谷 芳子

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   銀粘土賞/Silver Clay Award

     「お母さんあのね」 門倉 早由里

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   銀粘土賞/Silver Clay Award

      「プロスペローの本」 吉村 公伸

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   異素材アイデア賞/Different Material Idea Award

         「はな」 森 治美

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   異素材アイデア賞/Different Material Idea Award

         「森の瞳」 土屋 幸江

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   奨励賞/Award for Encouragement

      「竹やぶの先に」 小畑 みさ子

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   奨励賞/Award for Encouragement

   「桜華(おうか)」 川名 真紀

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   奨励賞/Award for Encouragement

    「からすうり」 木村 智子

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   奨励賞/Award for Encouragement

 「八色鳥(やいろちょう)」  岩田 健秀

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   奨励賞/Award for Encouragement

 「Once Upon a Time」 中山 由起子

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   奨励賞/Award for Encouragement

   「Sweet Pea」Susan knopp (U.S.A)

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   奨励賞/Award for Encouragement

 「Coloured little bowls」Eduardo Araujo (Argentina)

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   奨励賞/Award for Encouragement

   「Wasp Pehdant」Bernard Doherty (Australia)

 

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   奨励賞/Award for Encouragement

  「Ring」Mikheil Tsalkalamanidze (Georgia)

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   奨励賞/Award for Encouragement

  「LOVELY PURPLE」  Maria Hida (Brazil)

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   奨励賞/Award for Encouragement

  「Necklace」 Melissa Erlenbach Searle (U.S.A)

 

◎講評

□ 審査委員長/関 昭郞 (東京都庭園美術館 事業企画係長・学芸員)

   立体的な構成の作品に感じた表現の可能性
 中国の特長ある装身具に「點翠(点翠)」があります。欧文では、tian tsuiと表記されますから、日本語でも音読みのテンスイで良いでしょう。金属の装身具に色彩をつけるために、カワセミの羽を嵌めます。今日見られる作品の多くは、清朝のもので、金属は金や銀、真鍮のような合金が使われます。古代からある歴史的な技法で、使われるカワセミの羽は伝統的にカンボジアから取り寄せられました。彫りによることもありますが、金属線を縁、もしくは模様を作るために立てていく技術は有線七宝に共通します。七宝でジュエリーを作られる皆さんが見るべきところは、カワセミの羽による色彩の美しさとひとつひとつの文様を独立したパーツとして制作し、それを立体的に構成している点でしょう。
 今回の応募作にも、立体的な作品が増えてきたことが目に付きました。これは七宝の技術だけを競うのではなく、ジュエリーとして七宝の特長を活かした表現の可能性を生み出そうという本コンテストの目的に合致した傾向として、好ましいと思いました。台湾から出品されたChi-Yun Hsiehさんの木の枝の立体的な表現、山中さゆ子さんの作品もジュエリーとして良く作り込まれており、いずれも優秀賞に相応しい出来映えでした。
 最優秀賞のJeong Keun Park(Paran)さんの作品も立体的な作品ですが、スチール素材の選び方、色彩と複数色の釉薬が解け合う七宝の表情は高い美意識と技術が感じられました。
 上野の森美術館賞の菊地龍さん、清水三年坂美術館賞の内本節子さん、リトアニアから出品されたRūta Jurkūnaitė-Bruožienėさんも身につけて楽しい気持ちになれる作品が選ばれました。受賞者の皆さんをはじめ、翌年の更なる展開が楽しみです。

 


□ 審査委員/原 典生(日展会員、文化学園大学名誉教授)

   表現の多様性とエネルギーに感嘆
 審査会場に入っての第一印象は、ボリュウム感に満ちた作品が目立ったことです。七宝は焼く工程が最大の難関で発色や技法が大きく制約を受けます。立体表現はハードルが高く、平面として焼かれた部分を組み立てて立体化する表現が多く見られた過去の作例との違いを感じました。今回は優秀賞や2つの美術館賞、銀粘土賞などに多く見られ、良き手本になると思いました。第二は標準作品と言うべき作品で造形表現も技法の確かさも安心して見られた奨励賞の作品に注目しました。
 今回わたしは感性主導で審査に臨みました。気が趣むくまま、心に響く振幅の深さで選ばせていただきました。造り手は、まず自分の”思い”をいかに実現するかに専念すれば良いのだと思います。審査員3人、結果はほぼ一致しました。
 アルゼンチンやリトアニアを始め国際展にふさわしい各国からの秀作が集まり素晴らしい結果となりました。毎年前年を大きく上回り進化を続ける国際七宝ジュエリーコンテスト。来年は30周年との事、どのような進化が見られるか、今から大いなる楽しみです。

 

□ 審査委員/吉村芙子(日本工芸会正会員・日本七宝会議理事長)

   第29回国際七宝ジュエリーコンテストの審査を終えて
 毎年こつこつ1年間をかけて出品作を製作し続けている方が何人もおられます。毎回、審査の時に作品を拝見するのを楽しみにしています。そういう方たちの中から大きな賞を受ける作品が生まれると「よかった!」と思います。コンクールを続けていく励みとなります。今回の山中さゆ子さんの「春の訪れ」がそうでした。
 コンクールの審査は、3名の審査員が無記名で優秀作を15点選び、その中からさらに票を入れ合い、技法や表現、オリジナリティ、七宝の生かし方、仕上げの様子などを考慮して話し合って決定しています。今回の最優秀賞・優秀賞の作品については、3人の審査員の評価が一致してすぐに決定しました。
 上野の森美術館賞の菊地龍さんもこのコンクールのために作り込んだ作品を出品される作家です。毎回、展覧会にいらっしゃる方たちが歓ばれる楽しい作品を作られています。
 清水三年坂美術館賞は毎回国内作家と海外作家、1名ずつ選出しています。京都にあるこちらの美術館を訪れ、いつかはこの賞をいただきたいと願っている作家も多いです。内本節子さんの「パピオン」はすっきりと良くまとまった作品で七宝が生かされていると感じました。
 Rūta Jurkūnaitė-Bruožienėさんの「Woman in White」は穏やかな作風の良い作品でした。
 銀粘土賞は、毎年三菱マテリアルさんから副賞として銀粘土をいただいています。毎年、七宝と銀粘土を効果的に融合させた作品が増えてきていると思います。今回の3点の受賞作もそれぞれ違う生かし方の面白い作品でした。
 異素材アイデア賞は、最近はこの賞を狙って制作された作品が増えていると思います。
 奨励賞の作品もそれぞれ創意工夫された良いものばかりです。もう一歩前進されれば、大きな賞に繋がると思います。
 入選作の中にも釉薬を良く研究されたものや様々に工夫されたものが多かったと思います。形に凝りすぎたり、ジュエリー作品としては合わないものを組み合わせている作品もありましたが、それぞれ精一杯努力されたことの分かるものが多かったと思います。
 国際七宝ジュエリーコンテストは、次回は30回展となります。小さなアクセサリーから七宝作家の輪を世界に拡げていきたいと願って始めたコンテストですが、たくさんの方々のご協力で続けていくことができました。次回は何か記念になるような企画を考えています。今後ともよろしくお願いいたします。